まず、中学受験を例にとって、話をさせていただきます。
40年以上の人生のなかで、たくさんの私立中学校の出身者と出会う機会がありました。
私が進学した高校は、付属の中学校からエスカレーター式に上がってきた生徒と、私のように受験をして高校から入った生徒が混在していました。
彼らの話からも、中学受験は本人の意思より、ご家族さまの勧めで挑戦をはじめたケースが多いと感じています。
ご両親からの勧めで私立中学校に合格するも、公立の中学校を選んだ同級生もいました。
ご家族さまが熱心になって、公立校よりはるかに高い学費を払い、私立中学校に進学させても、
途中でドロップアウトした子も、たくさん見てきました。
私の友人は、中学から私立に通い、東京六大学に進学するも、卒業後は、それまで勉強してきたことは、ほぼ関係のない工場の仕事に長年、就いています。
自分にあった生き方を選んだ20年後の彼は、いまとても幸せに見えます。
たしかに、難関な資格に合格したり、競争率の高い職場に入るためには、高い学力が必須です。
しかし、机上の経験を積むことと、お子さまが将来、幸せになるかどうかは、まったくの別問題だと思うのです。
ここで言う“幸せ”とは、その人自身が自分らしく、幸福感を得ながら生きることができるか、どうかということです。
お子さまの発達の特徴や、個性とは、全然そぐわない方向性で大人が強引に勧めたり、無理に頑張らせても、本人が興味を持てなければ、強いストレスを与える割には、あまり身につきません。
また、お子さまが望まない方向で無理を強いられると、心身のバランスを崩す可能性が高まるばかりか、一度、壊れてしまったものは、ほとんどの場合、完全に元に戻すことはできないことを、病院勤務時代に目の当たりにしました。
有名大学に進み、大企業に就職するも、心身ともにボロボロになって帰郷した同級生もいました。
うまくいかなかったら、すべて大人の責任だとは思いません。親が我が子を想うのは当然のことです。
しかし、お子さまが持って生まれた個性や感覚を無視することはできず、大人が子供のためにいくら頑張っても、ある程度、環境を整えてあげたら、あとは“なるようにしかならない”という現実が確かにあると、多くの実例から痛感しています。
個人的には、偏差値が70以上も必要な学校を受験したり、超難関の企業や資格の試験を受ける機会がなかったので、いざという時に本当に役に立ったのは、学校や机上で学んだことではありませんでした。
困難な現実に直面した時に自分を救ってくれたのは、他人を除けば、自身の目で見て、考えて、行動を起こして、世界をひろげて、痛い思いや小さな成功体験を繰り返しながら、体で覚えた知識と経験だけでした。(もちろん、学校で基礎を習得できたからこそ、実践に応用できた面もあるでしょう)
以上の理由から、MAMEZO(まめぞう)では、お子さまの発達の特徴と個性、そして自主性を尊重し、机上の支援だけではなく、実体験をしていただく機会を、たくさん設けようとしています。
ご家族さまにとって大切なお子さまのことを第一に考えると、それぞれの特徴や個性を活かしつつ、いかに興味や関心を引き出して発達をサポートするか、その一点に尽きます。
大人がお子さまにそぐわない間違ったアプローチで接した結果、二次障害を起こさせてしまうことは、絶対に避けなければなりません。
焦って無理をしなくても、心身が健やかに少しずつでも発達できていれば、いつの日か、きっと道が拓けると信じて、地道に支援してまいります。